「戦略」が大事とわかっていても……/垂秀夫元中国大使の『戦略的思考』を読んで
昨年刊行された『日中外交秘録』が3万部を超えるベストセラーになった垂秀夫元中国大使の新作は、「日本には戦略がない」という過去、何度も指摘されてきたことについてだった。
大鹿 靖明
2026.10.04
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日本に戦略がない、あまりにもなさすぎる――私がそう思ったのは2000年ごろ、朝日新聞経済部で電機業界を担当していたころだった。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「電子立国」ともてはやされてきたのに、日立製作所や三菱電機、NECが相次いで大赤字に陥り、日産自動車はルノーの軍門に下った。凋落する大手メーカーは経営が場当たり的で、目先のことや流行に左右されやすく、安易に途上国のキャッチアップを許してしまう。しかも、窮地に陥ると、あわてて「戦略を立てなくちゃ」と外部の経営コンサルティング会社のマッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループを高い金を払って雇うのである。自社の戦略立案を外注した結果、各社の戦略はみな同じような内容になった。
こうした戦略の不在は大企業に限らず、日本政府も同じだった。長く外交官として政府で働いてきた垂秀夫元大使が、現役時代を振り返って痛感した「戦略の不在」を書いたのが本書である。「日本外交は長らく長期的な国家構想を描く発想が乏しかった」と記し、まず「目の前の個別問題の対処(いわば「モグラ叩き」型問題処理)」を挙げている。

垂秀夫氏の新作