〇月〇日、区長になった女の「それから」②/187票差
その石原が2021年11月1日、立憲民主党を中心とした野党と市民団体が共闘して担いだ新顔の吉田晴美にたたきのめされ、議席を失った。
石原伸晃はこの間、小泉純一郎内閣で規制改革・行政改革担当相として入閣したのをはじめ、環境相、経済再生担当相、党幹事長などを歴任した。長らく父親の石原慎太郎都知事の〝七光り〟のお坊ちゃんと見られてきたが、当選回数を重ねるにつれ、与党の重鎮の一人に数えられるようになっていた。
2021年の衆院選は、全国的には維新が公示前勢力(11議席)から4倍増の41議席に大躍進したのに対し、自民党は公示前勢力より15議席減にとどめた261議席だった。連立を組む公明党との合計では293議席を獲得し、両党で絶対安定多数(261議席)を維持するのに成功している。つまり総選挙は与党の勝利だったわけだ。

2021年の衆院選で石原伸晃を破って当選した吉田晴美(本人のインスタグラムより)
深刻なのは、むしろ立憲民主党のほうだった。枝野幸男が「与野党対決」を強調し、共産党や国民民主党、社民党、れいわ新選組と野党共闘を進めてはみたものの、いざ、ふたを開けてみれば、公示前勢力(109議席)を大きく割り込む96議席しか獲得できなかった。大阪10区では辻元清美が大敗を喫し、比例復活もかなわなかった。そのなかで杉並(東京8区)は例外的な選挙区だったといえるだろう。共闘が奏功し、新人の吉田が自民党のベテラン石原を下したからである。
杉並は革新系支持層が比較的、厚いところ
もともと杉並は1947年、東京23区で初めての革新系区長が誕生し、原水禁署名運動の発祥の地であるなど左派系の運動が盛んな土地柄ではある。一方で石原が連続当選するように自民党の地盤も厚い。山田宏区長(在任期間1999~2010年)が、「新しい教科書をつくる会」による扶桑社版歴史教科書を推すなど右派勢力も根強くある。
吉田晴美を当選させた勢いに乗って、次は2023年6月の杉並区長選で現職の田中良に代わる野党・市民共闘の候補者を擁立できないか、そんな動きが市民運動家の間で胎動しはじめた。もともと新自由クラブ出身の山田宏は、区長になると教科書問題のような極端な右傾化を見せ、それにとって代わったのが日本新党や民主党出身の田中良区長だった(在任期間2010年~2022年)。つまり田中区長を担いだ勢力の中には、2021年の衆院選で吉田晴美を推した左派・リベラル支持者も少なからずいた。